なぜ肉屋がおもしろいか


今まで、なぜ肉屋がおもしろいか、なぜ肉屋をやりたいと思ったか、を書いたことがなかったので、今回は少しここに書いてみようと思います。

一番の理由は、社長である父が長年の経験から目利きをして一頭買いする牛、私が子供の頃からお店で働いていた吉川店長や菅谷チーフ(75歳今も現役‼)が切る、本物のプロの精肉を、スーパーのお肉よりもデパートのお肉よりも圧倒的に美味しいお肉を、より多くのお客さまに知ってもらいたいと思ったからです。長年お買い物に来てくださっているお客さま、祖父、父、吉川店長、菅谷チーフ、今井さん、理恵さん、長年勤めてくれているスタッフ、みんなで守ってきたこのお店を、今後も続けていきたいと思いました(^^)

なのに肉屋なの?弟さんは何で継がないの?」

これはよく尋ねられますが、女だからどうのと考えたことは全くありませんでした。
むしろ、よくそう聞かれるようになって思うのは、お客様は女性が多いですし、男性の多い畜産業界、男性スタッフの多い西島畜産の中では、だからこそ出来る部分が多いのではないかな、と。


例えば、卸売市場にいけば、大抵の場合女性は私だけなので、名前を覚えてもらい易いですし、競り中に、私が札を挙げると、他の買参人が少し遠慮してくださる気が。とても申し訳ないのですが(^^;)
あ、弟には是非手伝ってほしいんですけどね。

「畜産業界に就職したら良かったのに」

肉屋の息子たちの多くは、学校卒業後、畜産業界に就職したり、そのまま実家の会社に入る人が多いのですが、私は大学卒業後勤めたメーカーでの経験も沢山生かせる、と思いました。
イントラネットを担当したことは、ホームページを作る際に役立ちましたし、ブランディングで学んだ”VI””BI”の考え方、人事評価制度も組合の制度も非常に参考になりました。

会社員時代は部署が変われど運良く上司に恵まれ、良い人の下で働くことができたのも、かなり大きいと思います。ある上司の口癖は「俺が責任を取るから、やってみなさい。失敗したら俺が謝るから。」そして、本当にそうしてくれるんです‼(^^;)例えば”10″の仕事を依頼されたら、相手がそれ以上に望んでいることはないか考えて”12″の仕事をするように心掛ける、とか。色んな事を学びました。
といえど、畑違いの業界なので、肉自体の知識が皆無だったので、全国食肉学校に通う必要があったわけですが。

「お肉の面白いところは値付け」

例えば、70円で仕入れた商品に30円利益を乗せて100円で売ろう‼という単純計算ができないのが肉屋の面白いところ。西島畜産は一頭買いなので、例えば一頭100万円で買った黒毛和牛は、部位ごとに分割し、部位ごとに値段を付けます。例えば、ランプステーキよりもヒレステーキの方が高い値段に設定しますが、それをどのくらい差をつけて値付けするかは、自分で決めることなんです。さらに計算が複雑になるのは、骨だけでなく、脂やスジを取り除く”歩留まり”の計算が生じること・・・大変。

だから、特売日で赤字ステーキを販売することができるんです。特売日のステーキは、他の精肉店がこの値段で買って、自分の店で販売したいと言ってくれるほど(^^;)

「西島畜産のユニークなところは、自社で一頭買いをして、自社の卸センターで脱骨整形作業をしているところ」

最近、”一頭買い”を唱っているお店が多いですが、自社で一頭買いして自社で脱骨整形作業をしている会社は少ないです。(小売店舗と卸センターが近距離なのは、もしかしたら都内で西島畜産だけかもしれません。)

理由は、脱骨整形作業ができる社員を養成できないことと、牛枝肉が入る冷蔵庫の設置が難しいこと、です。研修に行かせてもらった京都の弘さんも、市場で一頭買いしていますが、脱骨整形作業は外部委託でした。

自社で脱骨整形作業をするメリットは、鮮度を保てること、丁寧に作業ができること、スペックをかけた仕様等その時々に応じた細かい注文に柔軟に応えられること、などなど。かっぱ肉の切り落としのような珍しい商品を提供することもできます。

こんな強みがあることも、肉屋をやりたいな、と思った西島畜産の魅力の一つです。

「減り続ける街のお肉屋さん、大きな工場→スーパーへ」

中野区だけでも、以前の1/10にまで減ったと言われるほど、精肉店は減少しています。BSEをきっかけに倒産する精肉店が急増し、その後もお店自体の世代交代が上手くいかなかったり、スーパーの台頭・通販の増加により精肉店は減り続けています。

西島畜産は、近くのスーパーさんの精肉納入業者に「新井薬師のあの店舗は精肉の売上がダメなんですよ~~」と言われるほど、今のところはスーパーさんには勝ったぞ‼という状況ではありますが、大規模卸センターでは機械化が進み、同じ商品が効率的に大量生産される方向に進んでいます。ファストファッションが勢いを増すアパレル業界と一緒です。

日本よりも半歩先を進んでいると感じるここイギリス、ロンドンでは、どの街に行っても同じスーパーがあり、似たような精肉商品が販売されています。通販も日本の数倍取引が多く、ネットスーパーのトラックが毎日街中を走っています。どこに行っても、同じようなものが売っているのって、なんだか寂しいですよね。最近都内は、JRの多くの駅にもアトレができて、こうやって、それぞれの場所のオリジナリティが失われていくのかな~と思っちゃいます。

一方で、そんなロンドンでも精肉店は、まだ存在していますし、イギリス人よりも食にこだわる日本人は、生鮮品は自分の目で見て買いたいという傾向が強いと思います。食に強いこだわりのあるパリでは、至る所に精肉店があります(ロンドンの10倍はあるのでは)。スーパーよりも美味しいお肉を提供できれば、お客さまが離れることは無いのではないかな、と考えています。

また、最近は、農家さんが減り、子牛価格が高騰、その結果牛肉価格も高騰し、仕入れ価格も多くの精肉店の経営を圧迫しています。休日もなく利益も不安定で大変な仕事であるため、なかなか担い手がいないそうです。

書き続けるとキリがないほど、課題は多いのですが、だからこそやりがいを強く感じます(^^)

「美味しい食材が手に入る街、活気のある新井薬師へ」

以前、SNSで「新井薬師の肉のレベルは高い」という投稿を見かけて、嬉しく思いました(*^^*)

今後も、本当に美味しいお肉をこの街で変わらず提供し続けていきたい、と考えています。ただ、変わらず提供し続けるためには、変わらないといけないことも沢山あります。

ミートプラザニシジマがある新井薬師駅前商店会も、年々商店が減っています。商店街の活気は失われるばかりです(;_;)私が子供の頃は、肉屋の前に酒屋さんがあったり、布団屋さんがあったり、お豆腐屋さんも生地屋さんもありました。今では、みんな閉店してしまい、お店ではなく住居になってしまいました。

寂しい、という気持ちの面だけでなく、商店街の運営も難しくなるばかり。例えばミートプラザニシジマがある新井薬師駅前商店会のアーケードの光熱費や維持費はアーケードに面する各商店が負担をしていますが、住居となると、負担を渋る方もいらっしゃいます。

そんな商店会の活気を取り戻すため、西島畜産にできることを日々考えています。

小さなことですが、最近、お隣のパン屋さんや八百屋さんの商品もお肉と一緒に配達する、という試みをはじめました。近隣地区のみですが、3000円以上のお買い物で配達料は無料、パン屋さんや八百屋さんから配達料をいただくこともありません。

現状、電話とFAXのみでの受付ですが、今後はネット化を進め、対象の商店を増やし、その目標は、”ネットで買える商店街“。リアル店舗とネット店舗をリンクさせたいです。

書き始めると止まらないくらいやりたいことがある一方で、現状、夫がロンドンに転勤となり、自分の思うように仕事ができなかったり、目標が後ろ倒しになったり(なかなか直営焼肉店開店ができず申し訳ありません)、サテライト勤務にも限界を感じます・・・が、支えてくれているお客さま、取引先の方々、周りのスタッフにはとても感謝しています‼

今は、ロンドンなどヨーロッパ各国でのお肉事情を学ぶ良い機会となっていますし、日本帰国後にやりたいことを考える時間として、アイディアを色々と貯めております(^^)

創業者の祖父の口癖、「俺は美味しいものしか食わねえ!」を心に、次の時代も、新井薬師で美味しいものを提供し続けます。


長くなってしまったのでこの辺で。読んでくださり、ありがとうございました‼
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日英の肉比較

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豚肉 ヒレ編
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